レキオス

レキオス (角川文庫)

レキオス (角川文庫)

1000年の時を経て甦る、沖縄の伝説の地霊「レキオス」を巡る物語……と、ガチガチの沖縄・プリミティヴな世界を描きながらも、そのアプローチは意外なまでにハードSFだったりする。というか、その辺りはあまりよくわからなかったのだが、民俗学的なネタを科学の用語で書き換えていく大胆な試みなのだろう。

その「レキオス」争奪戦もただの女子高生から科学者、米軍、CIA云々と異様でかつコユイ面子ばかり。時間も過去へ過去へと遡り、物語がどこまでも巨大化していく。あとアクションシーンも多彩で一気読み間違いなしの面白さと、何の文句もつけようがない快作なのだが、どうも自分の中でイメージの風化が激しいのは何故だろうか。
オチのイマジネーションが必ずしも好みでなかったからか。あるいは、この「一気読み出来る面白さ」というのが、決して好きではないからか……。心地よい読書体験ではあるが、思った以上にツボにはまらないのが残念。まあ、これを超える傑作らしい『シャングリ・ラ』に期待するか。

個人的に一番好きだったのは、言葉の暴れっぷりだろうか。沖縄とアメリカとの関係(基地問題や、混血など)を描いた作品ではあるが、登場人物の台詞も日本語は当然として英語、ウチナーグチ、またはラテン語や物理学の言語などと、もの凄いごった煮感がしている。これが会話に奇妙なアクセントとグルーヴ感を生み出しており、高速に疾走する物語を大胆にかき回している。とにかく、カッコいいの一言に尽きる。

「アッチ」
「どこなんですか? せめて方向くらい指さしてくださいよ」