象 (文学の冒険シリーズ)

象 (文学の冒険シリーズ)

ポーランドの不条理系短篇集(というか、掌編集)。どうしてもあの辺の地域の諷刺性は掴みにくい。それが歴史や国民性だったり、知識不足を感じざるを得ない(東欧諸地域の作品は大概、諷刺性が含まれているように感じるのは気のせいか?)。でも、辛辣な文明評や黒い笑いのナンセンスなバカ話、素直に楽しめる作品は多い。

表題作の「象」は、象のいない動物園で立身出世主義の園長が巨大なゴム製の象を置くというもの。この園長の妙案(というか奇手)に対して、みなボロクソに貶しつつ、結局象が子供たちの前で破裂するという、まあ当然のオチ。そして、最後の一文が「一方、その時動物園にいた生徒たちは、学業を怠り不良になった。酒を飲んだり窓ガラスを割ったりしているそうだ。象なんか金輪際信じようとしないのだ。」……あまりにストレートな落とし方で、開いた口が塞がらなかったよ。

まあ、作風も結構バラバラ。ブラックジョークからスラップスティック、パロディまでといった次第。一冊を通して、新鮮な思いで楽しめる。他にも、おじさんの豪放磊落なバカ話「おじさんの雑談から」、人間電信の「旅の道すがら」、ゴシック・ホラーもどきの「鷲の巣城の没落」などなど。なかなか愉快で痛快。

「ジグムシ、どうして学校に来なかった」
「ママがいうんだ。世の中に悪い場所なんてないけれど、家のなかでじっとしているのが一番だって」