変身
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わりと最近DVDで観た映画、ロシアのワーレイ・ファーキン監督『変身』。タイトルからわかるように原作はカフカ。
この作品を映像化しようとしたら、アニメーションなりCGなり特撮技術を使わなければいけないようなものだが、これは人間が虫(毒虫)のように這いずり回ることでカバー。実際にカフカ自身で原著の装丁に虫が描かれることを拒んだという話があるように、読者に「毒虫」の解釈を委ねているようのだろうか。としたら、この映画の解釈はユニークであるとも普通に真っ当とも思える。
人が地を這いずり回り、次第に薄汚れていく過程を追いかけることで、カフカの原作のナンセンスな持ち味と次第に悲劇色を増してくる展開が素直に映像化されいて、良作だと思った。
で、まあ当然の如く(?)、『変身』を原作にしたアニメーションがある。
カナダのキャロライン・リーフ監督作品。ガラス板の上に砂(粘土?)を敷き詰め、下から光を当てることで作った、ストップ・モーションのアニメーション。10分程度の短篇なので、原作のなかで特に印象深いシーンにしぼって映像化したという。
アニメーションなので何の奇も衒いもなく、ふつうに毒虫してる(笑)。初めて観たときは、良くも悪くも失笑したことを覚えている。ザムザくんが見事なまでに奔放な動きをみせてくれる。特に最初にベッドから這い出ようとする瞬間の手足のうじゃうじゃ感が素敵。こんな虫虫した映像でも、気持ち悪いと思わせないユニークな作品なのではないだろうか(まあ、虫嫌いの人はどう思うか知りまへんが)。
そもそも原作が重く苦しい悲劇とみるのか、ザムザが素直に毒虫に順応する滑稽譚とみるのか、一般的な見解ってどっちなんでしょうか。作品を読み返すに、アイロニカルな毒成分を含みつつも、かなりユーモア小説の文法で描かれているとしか思えないので、こういった珍妙な映像は素直に喜んでしまいます。
NFB傑作選 イシュ・パテル、キャロライン・リーフ、ジャック・ドゥルーアン作品集 [DVD]
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