ババ・ホ・テップ

現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解説に「テキサスのスティーヴン・キング」とあるが、僕のなかでテキサスのイメージは「牛丼みたいにぺらぺらの肉片じゃなくて、男ならがっつりハンバーガーだぜ!」(byテリーマン@カーペットボミングス戦)の一言に尽きます。という枕にさしたる意味はないのだけれど、がっつりした中篇からコンパクトでシャープな掌編まで、色々と美味しい一冊。
ベストは「ステッピン・アウト、1968年の夏」。ランズデール版ボーイズ・ライフといえる傑作。非モテへたれ男子三人がうさ晴らしに女を買いにいくも、アクシデントの嵐嵐嵐。全体的にオフビートな本作品集でも、群をぬくオフビートさ。終始踏んだり蹴ったりのトホホ感がたまらない。この作品のように、抑えられない衝動(そして、結構しょうもない)を飼いきれずに、物語が変な方向に転げていくのがランズデールの持ち味だろうか。
表題作もいい感じ。死んだのは替え玉で、実際にはエルヴィス・プレスリーは生きていた。といっても、老人ホームでよぼよぼに老い暮らすだけで、アソコも勃たない有様。そんな怠惰な生活を吹き飛ばすように突如現れたミイラ(?)をノックアウトするために、若きロックンロール魂を再燃させる。まあ、語りもじいちゃんの戯言じみていて、実際に本物のエルヴィスなのかどうかは疑わしく、ちょっと「信頼できない語り手」みたい。しかし、彼が本物のエルヴィスかどうかは大した問題ではなく、ミイラとの対決でアイデンティティーを蘇生(それが偽物だったとしても)させていく点が熱い。死に損ないは死者を倒し生者になる……って、じっちゃんも最後死ぬんだけど。
怪獣たちが破壊に嫌気がさし、社会に無理矢理適合させていこうとするゴジラの十二段階矯正プログラム」も異様な奇想と、トホホ混じりの社会派小説にもなっているところが凄い。そして、嵐を前にした壮大な神話風「審判の日」、少年のやさぐれた成長がビビッドに伝わる掌編「恐竜ボブのディズニーランドめぐり」、ランズデール版「銀の仮面」の「草刈り機を持つ男」なぞなぞ。
是非ともランズデール版第二短篇集を編んでくださいな。あと、この「現代短篇の名手たち」叢書に期待するのはリューインだろうか。ってか、なんでジョイス・キャロル・オーツが無いんだよ、コラ!

犬神(アヌビス)のペニスでも喰らえ、このケツ拭き野郎!