東欧の想像力

ダニロ・キシュ『砂時計』★★★★☆
ボフミル・フラバル『あまりにも騒がしい孤独』★★★☆
エステルハージ・ペーテル『ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし』★★★☆
ミロラド・パヴィッチ『帝都最後の恋』★★★★
イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』★★★★

《続刊予定?》
ヨゼフ・シュクヴォレツキー『二つの伝説』
ラジスラフ・フクス『テオドル・ムントシュトック氏』
ドミニク・タタルカ『籐椅子』
パヴェウ・ヒュレ『ヴァイゼル・ダヴィデク』
ヨルダン・ラディチコフ『ラディチコフ短編集』


ただいま京都在住。ひいきは任天堂松籟社。というわけで、「東欧の想像力」!
世界文学とか奇想小説好きの間ではラテンアメリカ文学が特別な存在らしいが(あまり読んでないので、まだピンとこない。すまぬ)、それに劣らず強大なポテンシャルを誇っているのが中・東欧の文学ではないかと思っている。ナチズムとスターリニズムという万力に挟まれたチェコチェコスロヴァキア)や、内戦で解体したユーゴスラヴィア。こういった国の悲惨な状況を本を通して楽しく眺めようというのではないが、そういった状況下でもお涙頂戴に走らず歪んだ想像力が羽根をのばし、アイロニーで笑い生き抜こうとする東欧の小説たちには、心底唸らされることが多い。チェコ・アニメーションに対する興味も含めて、非常に興味のある地域です。
「最小の空間に最大の多様性」と評したのはミラン・クンデラだったか、これらの国々に多彩なお宝が眠っていると思うのだが、言語的な壁が厚いせいか(あるいは単なる日本での商業的な問題?)、邦訳作品が少ないのが難。その東欧の作品を原語からの邦訳で紹介するこの叢書は、日本の文学受容史における奇跡なのではないかとすら思っているのだが、どうだろうか。松籟社に対する拍手は惜しみません。
色々と不安に思っていた叢書だが、無事五冊出た。次回配本ともちゃんと決まってるようだ。09年2月にエステルハージ・ペーテル来日を記念したシンポジウムがあったのだが(彼のサインをもらったがなかなか判読不能。署名と見せかけて、実はいたずらでドナウ川を書いたのではないかと思ったりもしてる)、そこで配られたリーフレットにはこれからの予定も載っていた。うひゃー!! うまくいけばもう少し続けられるかもしれないとのことなので、全部買うよ!
ちなみに海外文学の単行本というとやたらと高いのがつらいのですが、中小出版社の本としては異様なまでに安いのです。誠にありがたい。