射撃場

ちょいと前の話だけれど、劇場で「ロシア革命アニメーション」というのがありましたね。2プログラムで、短篇16作上映するやつ。予告編は以下。

プロパガンダとかアジテーションなる言葉から、ろくな作品はなかろうか(あるいは、まあ話のネタに使える珍作か)と思ったが、意外な収穫も多かった。ロシア・アニメ草創期の変な映像技術作品から、アヴァンギャルド芸術の動きと融合した異形の傑作やら……まあ、実際はアタリとハズレの差が激しかったが。

で、そんな傑作、ケッサク16本に、未公開20作を加えてDVDボックスで販売されるとのこと、うげっ! また貧乏人の財布から金をむしるつもりか。

ロシア革命アニメーション コンプリートDVD-BOX

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劇場公開の16作が傑作選だとしたら、あとの20作にどれだけアタリが眠っているのか、怖々と買わねばなるまいか。アヴァンギャルド期のアニメーションが多く収録されていれば、それは誠に嬉しい。あの刺激的な表現には今でも新鮮な驚きが得られるのは間違いないだろう。というわけで、一番印象深かったウラジミール・タラソフ監督「射撃場」

20分と短篇アニメーションとしてはちと長いのですが、これ……大傑作やないですか。アニメーションには音楽に合わせて映像を作りやすいという特性があるが(ディズニーの『ファンタジア』みたいに)、それを見事に生かしている。そして、如何にもド・ポップな色彩や露骨なまでのアメリカン・キッチュ文化のパロリ方(ってか、ミッキー登場してるしw)、ダイナミックな動画、やたらと細かいディテール、人間を的にした射撃というガイキチストーリーの暴走具合(と、わかりやすいオチ)と、過激な悪趣味と醜悪なブルジョワの顔、いや、すげー!
この監督、『ライ麦畑でつかまえて』のファンのようで、主人公もそのホールデンがモデルになっている。この作品は実は未読なのでパスだが、細かいディテールのなかに大量のアメリカンなものを配置することで、あまりに強烈な印象を残すアメリカン・グラフィティを作り上げている。露骨で過剰なアメリカの空気はアニメーションならではの想像力に支えられているようだ。

と自分を鼓舞しながら、ボックスの発売を待つ。楽しみ。