ビーズゲーム

こと実験的なアニメーションにかけてはカナダが世界一云々と以前書いたので、そんなカナダで一番好きなアニメーション作家イシュ・パテルと代表作の「ビーズゲーム」。個人的には神の「死後の世界」を挙げたいけど動画が見つからないので、代わりに超傑作のこれを。このパテルが山村浩二に強い影響を与えたことでも有名。

一目瞭然、ビーズのみで構成されたアニメーション。これをストップ・モーションで制作するためにどれほどの日数を要したかとか考え出すと、それだけで頭が痛い。ビーズだけなのに、動画は滑らかでダイナミック、「点」のメタモルフォーゼの様も綺麗だ。物語性のない、こういったアニメーションは観ていて退屈という話も多いのだろうが、パテルに関してはとにかく圧倒されるうちに、全てが終わってしまっている。ぐうの音も出ない。

ビーズという点が細胞分裂のように増え出すところから開始。虫が海中の軟体生物や脊椎動物、猿を経て人間に至るという進化論(具体的な用語はよくわかりまへんが)、その道具・武器の進化と共にその文明をたどっていく。生物たちの弱肉強食という流れから、人間たちの愚かな戦闘の記録へと、同時にただの「点」では力を持たないものが数を増やすことによって、その可能性を増やしていくといった流れが、ビーズにおけるメタファーになっている、はず。

一応パテルはカナダで活躍する作家だが、生まれはインド。そういった背景が作品世界に色濃く反映されていることが多い。この作品でもワールド・ミュージック風の音楽やラストで人間のインナー・スペースに突入していく超展開(?)によく出ている。

このまっこと素晴らしい作品はイシュ・パテル、キャロライン・リーフ、ジャック・ドゥルーアンの傑作選に収録されている。ただし、何故か品切れ。けっ!