透明女

透明女 (1981年) (徳間文庫)

透明女 (1981年) (徳間文庫)

「このミステリ(SFでもいいけど)がひどい!」オールタイムベスト候補! ディックがアッパー・ダウナーとダブルでラリったような滅茶苦茶っぷりに加え、海野十三がAV(ってか、ポルノ?)を撮ったようなひどさ! こ、これは何じゃ!!

夜ごとに若い男を誘惑し、真っ暗闇のホテルの一室につれこんでむにゃむにゃむにゃ……という、決して姿を見せようとしない謎の“幻の女(ファントム・レディ)。その正体を見極めようとする敏腕にしてドンファンなTVのブローカー神保壮太郎だが、次々と失策に終わる。最終的に指輪にマグネシウムを仕掛け女の誘いにのったが……。
という如何にもな展開は開始早々で瞬殺(笑)。マグネシウムを焚くも引火式のスプレーをかけられ、返り討ちの顔面火傷。新薬とだまされそれを塗られた顔は、医科学では解明できないフッ素樹脂の人工肌に覆われ、それを剥がすことが出来ない。さらに頭にかぶせられたマスクは有名な俳優のもので、しかもその俳優は失踪中だという。……とまあ、物語の明々後日の方向にあれよあれよと転がっていく。
気がつけば謎のイオン電子(?)を帯電させられるし、美女ゾンビがわんさかと出てきて、某国の陰謀が絡んでくるわ、宮本武蔵に扮して人を斬り殺したり、人間犬に変身したり、終いには大量のクローン人間対エロ尼僧。もはやわけわからん(笑)。どんな予想も上記の予備知識も、本作を読むにはなんの支障もきたさないから大丈夫。
ちゃんと最後には“幻の女”の正体は明かされるが、おい!という噴飯もの。これが敵との対決シーンとかで明かされれば格好良くキマるのだが、それが国家公安委員会の秘密会議ってのはどうなんだ(笑)。一応科学的な説明(のようなもの)はなされるのだが、海野十三よりも山田風太郎っぽいともいえるかもしれない。
とまあ、超絶のB級っぷりを楽しんだわけだが、最後どこまでいっても官能シーンなので、読みながらだれた。正直くどすぎ! 物語の展開が全く読めない一方で、作品自体は金太郎飴レベルでどこもエロというバランスの悪さは……。とってつけたようんなシナリオに沿いながらも必ず濡れ場に行き着くAVみたいだよ。
しかし、こういったジャンル意識の薄い(端的にいえば、わけわからん)小説は戦前・戦後頃の変格探偵小説みたいなものの独壇場かと思ったが、1971年にもこんなが描かれていたというのはちょっと感動。

「牝だ! 女だ! 最後の雌がそこにいる。心は悪魔のようで、肌も蛇のように冷たいが、雌であることに間違いない。その女を襲うのだ」