Vincent

エドガー・アラン・ポーの映画といったらロジャー・コーマンがとりわけ有名らしい。『恐怖の振り子』や『黒猫の怨霊』など色々撮影しているが、代表作とされる『アッシャー家の崩壊』と『赤死病の仮面』を最近観たので、ちょっと書いておく。

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『コープス・ブライド』とアニメーションの名作を残しているティム・バートンだが、そのデビュー作は短篇アニメーション"Vincent"である。日本版がない(たぶん)せいか、あまり知られてない気もするが。この映画は上記のコーマン‐ポー映画の多くに出演しているヴィンセント・プライスを下敷きにしている。どうやらティム・バートンは彼のファンとのことらしいが。

いまだティム・バートンの最高傑作にあげる人が多い、かどうかは知らないが彼の原点にあたる名作だろう。ポーの映画にかぶれて、脳内妄想を飼い始めた少年が、その妄想に溺れるようにして破滅へと向かう。少年の幼い妄想にはギミックも多数登場し、B級映画のパロディといった感覚で上手く表現されている。ゾンビ犬などの影の使い方もいい感じ。6分というショート・フィルムでこれだけ世界観を作れていることに驚きもする。

それとコーマンの最高傑作名高い『赤死病の仮面』だが、これはヴィンセント・プライスのプロスペロー領主と死神の一人二役が有名。この「幽霊の 正体見たり 自分やった」については柴田元幸アメリカ文学のレッスン』(講談社現代新書)などでも言及されているが、バートン映画の少年ヴィンセントもこの設定が下敷きになっていると思われる。バートン流B級映画(というか、ほとんどB級な気もするが)の一つの作品として、オススメ。