エディプスの恋人

エディプスの恋人 (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

ややネタバレ気味かもしれないが、あまり自分でも頭が整理できてないので、以下は落書きみたいなもの。
「男と女と、どちらがウソつきだと思いますか? 男である。女はそれをウソだと思っていない」とは筒井のエッセイ集『言語姦覚』にある一問一答集のメイ言の抜粋。『家族八景』『七瀬ふたたび』と本作で、ダメでエロな男と賢い女性という構図が描かれてきた(別にフェミとかじゃなくて)が、本作ではそれが一歩進んで物語は「良妻賢母」へと。
前作は一体なんだったのかと言わんばかりに中学校の教務の事務員をしている七瀬さんと、謎の大きな「意志」に守られている生徒との恋愛小説。この「意志」とは何なのか?というのが物語の焦点になるわけだが、それは早々と読者には予想がつくもの。
むしろポイントはこの「意志」に気づいて後の七瀬さんの行動だろうか。神ともいえる「意志」の壮大さにふれ、この現実世界に「リアル」を感じられなくなり、惑い続ける。それでも世界を調停させるために、ひとつの役割へと向かおうとする。
とてもとても素直に迎えられるハッピーエンドではないが、涙をのんで三部作は終結。ある二人の女性が男を挟んで、継承される物語。壮大で強大な作品なのだが、三部作というステップの中で主人公の七瀬さんの「個」を強く意識できるだけに、偏在する神の如き「意志」とのバランスに戸惑いを覚える。それも傑作である所以かもしれないが……。

「いかがですかな。この世界、最近ちと女性化してきたようにはお感じにはなりませんか」