妄想の饗宴 英・伊・豪アニメーション傑作選

イメージフォーラムフェスティバル2009にてアニメーションのプログラムがあったので観てきた。英のAnimate projectsから7作品、あとはイタリア(「MUTO」)とオーストラリア(「チェンソー」)から1作品ずつ。
全体的に実験色の強い作品が多い。アニメーションというよりは、その技法を使った実験映像という感じで、正直その魅力はよくわからない。アニメを期待した身としては、ちょっとつまらない……(とはいえ、チェコやカナダにも物語性よりも、実験性が前面に出た作品はあるわけで、それとどう区別するのかは微妙なところ)。
以下、何作か印象深いのを。

バーナビー・バーフォード「きずもの」
陶器を使ったアニメーション。高きところにいる囚われの少女を、下界から少年が救いに行くというありきたりな恋物語。陶器という以外に観るべきものなし、なんか普通のアニメーション。

ステファン・アーウィン「ブラック・ドッグス、プログレス」
大量のフリップ・ブックを使ったアニメーション。ブック同士が繋がっている様な関係ないような微妙な距離感のなか、そのブック内の世界がひたすら反復される。反復を繰り返しながらも、徐々に世界が黒犬に変容・侵食されていく異様な作品。音楽もあわせてグルーヴ感たっぷりの傑作。なので、リンクをば。

BLU「MUTO」
ブエノスアイレスの街中の壁を使った、グラフィティ・アニメーション。壁といわず床といわず異形の生物がはしゃぎまわる、その規模を考えただけでも恐ろしくなるが、インパクトは大。異形のグロテスクなメタモルフォーゼがやりたい放題で、一瞬一瞬から目が離せない。ぐちゃぐちゃっという印象は全く見せずに、カリッパリッという感じの肉感の演出が素晴らしい。
タイトルの「MUTO」が何を意味するのかわからないが、日本語で「無頭」と当てたくなる。是非、観よ

デニス・トゥピコフチェンソー
森林伐採で暮らしているフランクとその妻エヴァの関係が、フランク・シナトラと妻のエヴァ・ガードナーと重ね合わせながら描かれる。闘牛士と妻との三角不倫関係、闘牛とチェンソーにおける20世紀へのノスタルジー云々。
メタファーを使いながら丁寧に組み立てられた物語だが、陳腐な男女関係などの下敷きが退屈で、個人的にはどうでもいい作品。


まあ、スクリーンで大傑作の「MUTO」が観れただけで大収穫ではあった。