ブルガリア映画特集

東京国立近代美術館フィルムセンター「ブルガリア映画特集」に「アニメーションとドキュメンタリー」というプログラムが二つ。とはいえ、ほとんどが長編ドキュメンタリーで、短篇アニメは五つだけ。ちょっと物足りない……。

ペンチョ・クンチェフ「青白き月」

ピエール・ルイスの詩集「ビリティスの歌」が原作らしい(未読)。古代ギリシャを舞台に、少女のエロティックな日常。
緑や青を基調にした淡い色彩のなかで、少女や妖精が周りの木々、川とゆるやかなメタモルフォーゼを繰り返しながら描かれる。非常にファンタスティックという印象も強いが、少女の性器などを直接に表現しないことで、妙にエロティックな作品になっている。さりげなく薔薇にメタモルフォーゼしたり、川に映った姿として表現されたり、やたらと想像力をかきたてられる。別におっさんじみた目でニヤニヤ観ていたわけではないが、なかなかの佳作。

ツヴェトミラ・ニコロヴァ「A+E」
物干し綱に下げられた二つの洗濯物が恋に落ちて、中空を舞う作品。
かまいたちの夜』のように半透明で表現された人や、全体に赤紫がかった淡い色彩でリアリズムよりは、幻想よりの作品。オチはなんてことないが、幻想的な雰囲気のなかで舞う洗濯物の動きがユニークで面白い。

アンリ・クレフ襤褸
前二作とは一転、ペン画(?)によるノイズ混じりの表現。風がごうごうと吹き荒れるなかを、ボロを着た男が吹き飛ばされる。木に巻きついた布切れが旗となり、そこから男の歴史が回顧されていく。ブルガリアの歴史と重なっているのかもしれないが、そこは不明。とりあえず、迫力あるアニメーションは印象的。


スラフ・バカロフ「ZIRO」
爆弾で吹き飛ばされた刑事(?)と泥棒(?)の争いを描いた作品、だろうか。大人世界のグロテスクなパロディになっているようだが、CGを使っているぶん、ありがちな作品に感じる。


ストヤン・ドゥコフ「五月」
ブルガリアの農村のほのぼのした雰囲気を描いた、子供向けの作品。童話か何かが下敷きになっているのかどうかよくわからないが、うとうと寝てしまった。