城―カフカ・コレクション (白水uブックス)

城―カフカ・コレクション (白水uブックス)

予想していた感じと全く違う作品だった。測量士が城を目指せど目指せど一向にたどり着けず苦悩する、重たい作品だとばかり思っていた。が、実際はというと測量士は城に行くのを早々に諦めてるし、そこで偶然出会った女性と結婚しようとして、あげくそれがこじれて大変なことになるという……。終盤はkaカフカ研究者が頭を悩ませるのとは別の意味で、「城」って何だよ? と言いたくなる。
主人公のKは城の麓の村で右往左往するわけだが、城はおろか村の中にすら入り込めていないというのが実際のところ。この閉鎖的な共同体の論理がつかみきれず、結局のところKはよそ者でしかない。ときにはお役所的なルールであったり、村の中のお約束であったりと、Kのルールとは全く別物で翻弄され続ける。村人とコミュニケーションをはかるも、一向に何も出来ず期待すら出来ないまま、物語は淡々と進む、のみ。
村人はやたらと眠るわ、やたらと饒舌だったりするわ、助手の二人はいつも不思議な振る舞いばかりする。この不思議なディスコミュニケーションが不思議なユーモアを生み、また辛辣な台詞がさっと飛び出たりする。
これを退屈な話と思うか、不思議(不気味?)なユーモア作品と感じるか? 人によって感想は異なるのだろうが、個人的には非常に楽しめた。これをお役所批判とか民族性のどうのこうのと小さな解釈をする気はおこらないけど。

あたなは城の人ではない、村の人ではない、何でもない、そのくせ残念ながら何者かではある、よそ者だ、どっさりと、どこにでもいる者の一人だ。