弓形の月
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1996/08
- メディア: 文庫
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だ、だめだ……。もはや言葉もない。
両性具有(裏のあらすじ紹介にも書いてるし、別にネタバレではない)に関しては、泡坂妻夫も過去に描いたことがあるテーマだが、これをここまでやっちゃっていいの……というくらいに、突き詰めた究極の作品。今まではある程度ミステリと幻想性との両方に足をつけていたが、本作ではラストで一気に幻想へと突き抜けてしまう。この夢幻の桃源郷的な世界観も、また乱歩を思わせるようで美しい。
本作のヒロイン(という言葉も正確ではないだろうが)、作中で『真珠夫人』のようであったり、ボーイッシュになったりと、ころころ性格を変貌させるため、読者は徹頭徹尾翻弄され続けることになる。飄々と読者を手玉にとるという点では、これまた非常に泡坂作品らしい。
苦手な人はとことん苦手だろうなという気もするが、個人的な大好きな作品。あまり人に薦めやすい作品ではないけれど。
「先生も男と女の二進法では分けられない人なんですか」