ザグレブ・フィルム作品集

旧ユーゴ、クロアチアのアニメーション・スタジオ、ザグレブ・フィルムの作品集。
他の諸国の作品に比べると、技術や手法では変わったことはしていないように感じるが、非常に特異な作品集。初期(50〜60年代)の作品は人が丸かったり四角かったりと、シンプルな線で表現された記号じみたところがあるのだが、これが自在に伸び縮みして動くことで独特のリズムを作品に与えている。音楽も非常にリズミカルで、最高にテンポのよい洒落たセンスを存分に楽しめる。
まあ、物語自体は大したものではないのだが、この単純さがスラップスティックな印象を強めている。と同時に、東欧の複雑な政治的背景が巧みにアイロニカルでくるまれているという、素晴らしいユーモアセンスだ。
70年代以降は表現自体は普通のアニメーションに近づいていってしまうが、他の国に例を見ない(と思う)魅力的な作品集だと思う。
また、ポーを原作とした「赤き死の仮面」も映画化されている。こちらは油絵による重厚な絵画的表現のもので、こちらもオススメ。ただし全体的に赤褐色の背景が多く、原作の七色の部屋の鮮やかさが映像化されていないのが残念だが。

こちらで多少サンプルを観ることが出来るよう。