てのひら怪談

([か]2-1)てのひら怪談 (ポプラ文庫)

([か]2-1)てのひら怪談 (ポプラ文庫)

文庫本の見開き一ページに納まる怪談一〇〇編+文庫本の書き下ろし八編。ネット上の公募による作品だが、倍率はかなり高いのだろう。全体の水準は高く、田辺青蛙黒史郎のように後にプロデビューした作家がいるのもなるほどど頷けるもの。

作品も正調怪談、都市伝説、シュール系……と見事なまでにバラエティー豊かな選集。京極夏彦の解説にもあるが、自分にとって「怪談」とは何なのか?を映し出すのに、良き鏡となってくれる。そういった意味では非常に読書会向きだろうか。

個人的には都市伝説系よりも、文体からざらっとした手触りを感じさせる作品に怖さを感じる。特に巻頭におかれた我妻俊樹「歌舞伎」は、砂場で乾電池を拾うという不思議な回想がアイデンティティーの揺らぎをいや〜な感じで描き出している、傑作。また、田辺青蛙「あめ玉」の不思議な語りも愉しく読めた。

この短さによくぞ……という出来栄え。大なり小なり玉石混交の感はあるが、安心して楽しめる玉砂利の如きアンソロジー

占い師曰く、掌には人の営みのすべてが映し出されるという。