壊れた少女を拾ったので
- 作者: 遠藤徹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2007/11/21
- メディア: 文庫
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『弁頭屋』の改題文庫化。選り取りみどりな珍作・奇作。
冗談と恐怖の紙一重。「弁当」と「頭」がとりわけ「思いついたからやっちゃいました」感があるが、他の作品も「家電」と「情交」、「少女」と「修理」と、全く異質のものが結合されている。という無茶な結合から、次第に人と人とを隔てる垣根がぐずぐずどろどろと融解し、同一化するのか否かという際どい作品世界が生まれる。
不思議な酩酊感を思う存分に楽しめる一冊。以下、短評。
「弁頭屋」
日本でまだ戦争が続いており……という、割とありきたりな異常設定が「弁頭」によって斜め方向へと展開し出す時の衝撃は最高。親父の頭臭いとか女性の頭なのにスタミナ焼き定食、と妙にリアルな説明もしてあるのが笑わせる。次々と物語が変な方へと転がるので、読んでいて飽きさせない。
「赤ヒ月」
人肉食嗜好の聖餐を描いた作品。この共同体の内と外の境界が血みどろに崩れ出すラストは圧巻。だが、カニバリズム自体はありきたりなもので、そこが物足りない。「姉飼」とか「弁頭屋」のようにありえない結合が見せる揺らぎのが、遠藤徹の持ち味ではないだろうか。
「カデンツァ」
妻が「炊飯器」に浮気をし、自分は「ホットプレート」のアンナにめろめろになる話。シュールな映像が見せるギャグに笑わせるが、物語の展開は予想の範囲内。
「壊れた少女を拾ったので」
壊れた少女とおねえさまとの夢みるひと時の少女小説? 壊れた少女を自分のパーツを使って修理をし、おねえさまからの虐待に恍惚とし……ちょっと勘違いしたうっとり感がたまらない。文体もねっとり練られており、集中ベスト。
「桃色遊戯」
ピンク色のダニが世界を覆っていく、破滅的世界観。奇妙な世界観のなか、人々は如何に生きていくか……読ませはするが逆に普通すぎて、短篇集としては割を食っている印象。
それはもうずいぶんな壊れようで。ほれぼれするような壊れようで。目も当てられないほどです。