聖家族

聖家族

聖家族

日本最強の小説家による、最強の一冊。最高かどうかはわからないし、そもそも日本の現代文学に明るいわけでもないが、勝手に最強の小説家だと思っておく。

で、その古川日出男による最強の妄想東北史。一読するに、非常に一筋縄でも二筋縄でもいかない。物語の展開にしても、時系列などめちゃくちゃ。時間は用意に伸び縮みし、加速する際の起爆ももの凄い!
記憶と記録が衝突を起こすことによって、時間が、家系が、東北が、日本が豪快にシャッフルされる。物語をかきまわすアイテムも、ラーメン、鳥居、ビートルズ、東北弁、烏天狗、秘伝の拳法……と、何でもあり。詰め込められる物は何でもかんでも、物語に圧縮されている。
そして、その物語がぐだぐだになるギリギリの場所で、最高にカッコいい登場人物たちが叫びながら疾走している。物語の核となる狗塚家やその「おばあちゃん」たち、最後に物語を牽引するある家系、AとかBとしか語られないちょい役の人、「東北」に完全に根っこを下ろしてしまっている人……皆決して忘れえない。

語ることの愉しさと難しさを思わせる、東北弁の数々。単純に日本の物語としてだけでなく、これは他言語でも読まれるべき作品、であってほしい。世界中の物語を翻訳するという点で文学大国である日本だが、物語を発信する場としてももっともっと活躍してほしい(村上春樹だけじゃなくてさ……)。
何度書いても全く整理がつかないけど、とりあえず最高の一冊。こんな傑作に出会えたのが本当に嬉しいことだ。

地図という二文字は、もしかしたら何かの略語じゃないかな、と。二つの漢字が、ほら、アルファベットの組み合わせのような。だとしたら、何と何かな、と。答は簡単です。地獄の図書館、ですよ。地獄の地に図書館の図で、ほら。ちゃんど地図になっばい?