赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

かる〜い気持ちで読むと、嫌な目にあう情念小説。とにもかくにも異が痛む。

社会からドロップアウトした「私」が東京から尼ヶ崎へと流れ流れてくる。そこでであった女性から与えられた仕事が、病死した豚や鳥をさばいてひたすらモツを串に刺し続けるというもの。一本三円という値段や、異様な臭気、夏の熱気に何ひとつ言わず、黙々と串を続ける……異様なことこのうえない。周りの人物たちもやくざや彫り師やらと、まともな人物などいやしない。それでも、中身のカラッポな「私」が一番異様にさえ思われてしまう。

そんな「私」に唯一残されているのが性欲というのもわかりやすい。物語の終盤で「私」はある女性と逃避行するはめになるのだが、その頽廃的と官能が入り混じった雰囲気は、かなりおぞましくも、やはり目を離せない迫力に満ちている。と同時に、社会から追い出された「私」が、結局辿りついたどん底からも追い出されるラストは切ない。

「言うていた」「酔うていた」という関西弁の文章もそうだが、言葉遣いそのものがかなり独特。端的に言えば、読みにくいのだけれど、数十分ほど読み進めると、この文章から目が離せなくなる。

読んでいてつらい……と思いながらも、やはり面白いのは否定できない。よくこれが、直木賞をとったものだ。

腐れ金玉が歌を歌い出す。