山魔の如き嗤うもの

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

刀城言耶シリーズ第四作。

「忌み山」にまつわる怪奇小説じみた手記に始まり、言耶が事件に介入するかと思いきや、何がなんだかわからぬままに、あれよあれよと事件が連続して起こる。ほとんど被害者たちとの接触もないままに、事件が勃発するという奇妙な構成が、作品全体に不思議なテイストを与えている。

謎も見立て、マリー・セレスト号ばりの消失、密室……と大変贅沢なのはお約束(?)。解決も前作『首無の如き祟るもの』ほど鮮やかでなくとも、一点をひっくり返すところから、怒涛のどんでん返しが始まるというもの。その犯人の出し方も非常に意欲的な試みをしたりと、構成共々特異な印象を残す。本格ミステリとしては、十分傑作といえる出来。

しかし、ホラーとのハイブリッド具合はいささか物足りない。手記に書かれた異様な「怪異」が怪異でなく解決可能というのはミステリによくあるものだし、中盤のサスペンスも物足りない。結局、怖さを感じたのは最初の手記と、ラストだけだったような……。まあ、嗤いながら山を駆け上る犯人のインパクトは強烈なのだけれど。

「嗤われたら、どうなるの?」
 子供の頃、祖母に訊いたことがある。でも、返ってきたのは一言だけ、
「終わり……」