首無の如き祟るもの

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

刀城言耶シリーズ第三弾。

首無し死体、密室、人間消失……事件が完全に解かれるのも、初事件から何十年後の名探偵登場により……。傑作『厭魅の如き憑くもの』の肌にさわるようなホラー的嫌さは薄まったが、ミステリ色は大増量。これでもかといわんばかりのラストの連続どんでん返しも含めて、堂々たる本格ミステリの傑作に仕上がっている。

このシリーズでは常にミステリとホラーのハイブリッドを念頭においているよう。生理的な嫌さを催させるホラーは弱まったのではあるが、本作ではホラーが完全にミステリの領分に吸収されている感が強い。
本作ではたった一つの鍵を見つけるだけで、多くの謎が一気に解決するというコペルニクス的転回(?)を思わせるミステリなのだが、その一つの鍵が通常ならありえないものなのである。そのありえないことが通用せしえる世界が、民俗学的な面から見事に構築されている。
つまり、このような真実が成立すること自体がある意味ホラーでさえある。この鮮やかさはミステリ的にもホラー的にも高いレベルを誇っている。

また、事件の関係者が事件の模様を探偵雑誌に連載するという体裁からも、最後に何重ものどんでん返しを仕掛けられている。作者の機知と呼ぶには、あまりに贅沢な出来。

今後とも作者の代表作になるに違いない傑作。

そもそも淡媛は、なぜ首を斬られたのか。