黒いハンカチ
- 作者: 小沼丹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2003/07/12
- メディア: 文庫
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1958年に発表された短篇集。初出誌は「新婦人」とのこと。
雑誌が雑誌なだけにミステリ色が強いわけではないのだが、作者の飄々とした筆致がとにかく楽しい。探偵役のニシ・アズマも趣味は午睡といわんばかりの変わった人物だが、事件が起こると意外と行動的。
直接的に事件に介入しようという様はホームズを思わせる。また、何が起こっているのかわからぬままに、いつの間にか解決しているという不思議なテイストは、チェスタトンのブラウン神父を思わせもする。探偵役を印象付けるためのロイド眼鏡も、ホームズのパイプのようにいい味を出している。
古きよきモダンな香りと瀟洒な雰囲気。当時のちょっと洒落た小説といった感じだろうか。指輪、ハンカチ、シルク・ハットから、舞踏会に喫茶店と……小道具や舞台が煌くように描かれる様は非常に楽しい。一番印象深いのは「スクェア・ダンス」。
掛けていた大きな眼鏡を外したニシ・アズマは笑って答えた。
――外すと直っちゃうんです。