MAZE

MAZE (双葉文庫)

MAZE (双葉文庫)

アジアの西の果てにある、謎の白い匣型建築。ここに入ったきり、戻ってこれない人が多々いる。そこにある「人間消失のルール」とは……?

とまあ、珍妙な設定の作品。この「豆腐」という謎の迷路に入るでもなく迷うでもなく、まずそれを解体するというプロセスそのものがユニーク。
とはいえ、その解決自体は二章で到達してしまう。特に意外性が強いわけでもないが、突飛な設定に無理なく論理が追いついて、本格推理の佳作といった趣さえ感じられる。

だが、何故このような建物があるのかという謎を巡って、物語は二転三転する。探偵役一同の間にも疑心暗鬼が芽生え始め……とサスペンスも盛り上がってきて楽しく読めるのは間違い無いのだが、最終的にはある程度現実的な点に落ち着いてしまうのがいささか物足りない。この「豆腐」がイラクを監視するための……という辺りも、やはり拍子抜けをしてしまう。恩田陸の作品はオチがないという批判もあるが、本作に関してはオチがないほうが面白かったのではないかという感じがしてしまう。

やはり容易に解体されうる「MAZE」では物足りない。しかし、ラストで不可思議な点もやや残して、この迷宮の堂々たる矜持を保とうとする姿勢は好ましい。

なにはともあれ短い分量で、起承転結を明確にエンタメに徹した佳作ではある。

その中には永遠に続く一瞬があるというが、その伝説の真偽を確かめたという噂は未だ聞かない。