念力密室!

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

SF設定を前提とした、チョーモンイン・シリーズ第三作の連作短篇集。いずれも密室を扱ったものだが、そのトリックは全て超能力。そして、謎の焦点は何故密室状況にしたのかという、ホワイダニットにしぼられる。

「ホワイ」と一口に言っても、謎の作り方はそう単純ではない。
作品によっては密室の内に死体があるとは限らないし、犯人が超能力者だとも限らない。閉ざされた窓とベランダという奇妙な密室設定の事件もある。これに殺人なども絡み、科学と超能力の謎のブレンド具合はなかなか巧み。
謎に対する解答も、殺人事件自体との距離を自在に操ることで、様々なバリエーションを生んでいる。謎、解決共に、豊富な作品集である。

また、そこに絡むのが誘拐事件であったりもし、短篇とはいえ、なかなかプロットは錯綜を極める。超能力者が密室状況を作り出すということには、事件の発見者はこう動くに違いないという、予測の下にある。特に「鍵の戻る道」では予測が肥大化した自我ともいえる妄想スレスレを伴い、それ故に狂人論理と言わんばかりの意外性を生むのに成功している。このエゴたっぷりの嫌な犯人像は、なかなかに西澤らしい。
これが集中のベストだが、「乳児の告発」なども○。

「何だかんだいって、わたしは科学捜査の人間。なものだから、超能力なんてものが絡むと、どうも頭がよく回らなくなるの」