2009年度総括?

結局、年末はぐだぐだする内に終わってしまった。
読書も東欧圏に興味をもったり、他各国の文学を読もうと思ったり、エッセイなども読みたくなったり、何もない内に終わってしまった。興味の範囲が広がったせいで、ブックオフでの買い物も無駄に増えて、あまり新刊に手が出せなかったのが残念。
ということを受けて、新年はどうしようとか何も考えていないのだが……。まあ、四月以降にまた環境が変わるので、本が読めなくなることだろうて。

以下、昨年もっとも印象に残った新刊10作。

津原泰水『バレエ・メカニック』
津原泰水にはまって、去年だけで6冊も読んでいたらしい……なんだか勿体ないな。一番好きなのは『綺譚集』だが、長編でのベストは新刊のこれかもしれない。ごりごりの濃密でシュルレアリスティックで、脳髄がとろけます。
これが最高の一冊、あとは読んだ順に列挙。

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』冷たい言い方をすると、小川洋子の入門書になってしまうのだろうか。でも、ひたすらある世界が反復する初期の作風からの変化としては、今後の小川洋子の里程標になるのではないかと。チェスを貪欲に取り込んだ意欲作と思いたい。

デニス・ジョンソンジーザス・サン』
白水社《エクス・リブリス》では、今のところ『通話』が一番人気なのだろうか(年末のベスト本とか見てると)。でも、マイ・ベストはダントツこれ。まあ、内容なんて全く覚えちゃいないけど、脳髄にハンマーを食らわすような強烈な文体でぶんぶんふんまわされた。

片岡義男『花模様が怖い』
年末のベスト本でも、普通にスルーされたような(選集だからか)。でも、文庫王国かなにかで岸本佐知子さんがこれに言及してたような。グラフィカルでクールでプレーンな(?)拳銃短篇集。

ミロラド・パヴィッチ『帝都最後の恋』
なんとなく応援してる《東欧の想像力たち》。ホラ話+遊び心+もって回って、結局何が言いたいのかよくわからない文体……などなど、チャーミングな秀作。

米澤穂信秋期限定栗きんとん事件
前々から応援していた作家ながらも、気がついたら大人気作家になってしもて、逆にあまり読まなくなってしまった。ごめんよ。現代のアントニイ・バークリーを言わんばかりのイヂワルさが大好きです。

ジョー・R・ランズデール『ババ・ホ・テップ』
なんといっても『ステッピン・アウト』が鮮烈だった。最近ミステリが素直に楽しめないのは予定調和的だからということもあって、この「予定調和」から外れるのは大概フランスのミステリ。「ステッピン〜」は普通にアメリカンなエンタメなのだが、腹を抱えるほどにオフビートだった。

ジャック・ルーボー『麗しのオルタンス』
おフランスの前衛的アホ小説が、ミステリとして紹介されぶっとぶ。いざ、読んでぶっとぶ。ぶっとび仲間たちの投票で「このミス!」にランクインいけ!と応援したが、25位くらいだった……お願いだから続編の翻訳頼みます。

イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』
やっぱり《東欧の想像力》から。へたれのトホホ感が好き。トホホと表現するにはあまりに重たい徒労感が漂う作品だが、読んでいる間は背筋を冷や冷やさせながらウフウフ言って読んでます。ぜひノーベル文学賞をとって、絶版本を復刊してくださいな。

ドン・ウィンズロウ『犬の力』
正直エルロイほどにははまれなかったのだけれど、エルロイばりのノワールが好きなら必読だろうか。中米という舞台はあまり読んでこなかったけれど、色々と宝庫かもしれない。

新刊はほとんど読まなかったのでバラつきはあるが、そんな感じ。
今年は一層本は読めなくなるので、これからは「好きな本」だけ感想を書き散らかそうか。うん、そうしよう。
実際は、どんなジャンルや作風でも楽しめちゃうぜ! という素直な本読みに憧れるのだけれど、それは難しい。本を読んでいくとジャンル読みとしての小うるささが出てしまうので(だから、最近はミステリが楽しめないのだけれど)。だから、本読みの老害にならないように、まずは素直に本を楽しもう、とポジティブにいきたい(もちろん、とても評価できないような作品はあるけれど)。
ので、★評価も終わり。これからは「好きな本」メインで、「大好きな本」だけカテゴライズしておく(微妙な本は読書メーターでぐじゃぐじゃ言っておく)。