チェコアニメ新世代Ⅱ

チェコアニメ新世代II [DVD]

チェコアニメ新世代II [DVD]

チェコアニメ新世代」シリーズの二巻とはなっているが、実際はアウレル・クリムト(Aurel Klimt)単独での作品集。カフカばりの不条理劇やら、地方の民話めいた作品や、あらゆる音楽を取り込んだミュージカル風のものと、ややグロテスクな人形の造形もあわせて、ちょっとヘンな感じが好きならオススメ。

「マシュキンはコシュキンを殺した」
突然マシュキンの部屋に乗り込んだコシュキンはロシア民謡を踊り出す。懇願しても出て行かないコシュキンを、マシュキンを叩き殺す。というだけの話が、民謡の軽やかな雰囲気のなか淡々と行われて、バカバカしいというか「???」というか、とりあえず吹き出す。デビュー作でこれかいな(笑)。

「ブラディ・ヒューゴ」
西部劇ならぬ東部劇。鞍馬にまたがる悪漢ヒューゴのバカ映画。安っぽさと粋の良さ、ユーモラスな動きと、不思議な珍作に仕上がっている。しかし、このヒューゴ役の俳優のバカっぽさもなかなかええ味しとるな……。

「魔法の鐘」
不思議な魔法の鐘のおかげで幸せに暮らせる小さな村の話。チベットだか中国だかよくわからない国の人が多く登場するが、それによって次々に変化する音楽のスタイルがユニーク。戦争の場面で鐘のおかげで両国家の人が手を組んで歌い踊るというのも随分理想的なきらいはあるが、なんとも気持ちのいい作品。

「落下」
最近、柴田元幸の雑誌「Monkey Business」やアンソロジー「昨日のように遠い日」で注目をあびている(?)ダニイル・ハルムス原作を翻案したアニメ。屋根の上の老人が徐々に滑り落ちていくも、警官や救急車、葬儀車が集まるだけで誰も助けられない。皆が見守るなか、そこに住む浮浪者(?)だけがバタバタと落ちていく……という異様な不条理作品。カフカとかが好きなら、間違いなくツボだと思う。
酒を飲んだくれたジジイは転がってるわ、浮浪者の死体には誰も見向きもせずゴミ扱いだわ、やたらとアイロニカルというかグロテスクというか……これを観ると、原作が気になって仕方がない。こういったヘンな作品とアニメーションの技法とは随分相性がよいと思わせる、傑作(たぶん)。ってか、この全く可愛げのない猫が可愛い(笑)。

「フィムファールム」「怖いもの知らずのフランク」はちょっと民話風の作品。悪人の内面を戯画風に顔に出したいや〜な感じの人形が大量に登場する。クリムト作品全般にいえる特徴だが、こういった感じがたまらないな。