ボルヘスと不死のオランウータン
ボルヘスと不死のオランウータン (扶桑社ミステリー ウ 31-1)
- 作者: ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ,栗原百代
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/06/28
- メディア: 文庫
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とにもかくにも脱力半分、苦笑半分。大真面目にミステリを期待すると(まあ、そんな人はおるまいと思うが)肩透かしを食うので要注意。
エドガー・アラン・ポーの研究学会。その宿泊先のホテルで起きた密室殺人に、ボルヘスが挑む……のはいいのだが、これが曲者。
謎の焦点は密室とダイイングメッセージの二点にしぼられるのだが、謎の提示の仕方がとにかく曖昧模糊としている。死体発見後に多くの人が入り乱れることで現場の保存は全くされない。なお悪いことに、ダイイングメッセージを見た人間は一人だけであるにも関わらず、その者がほろ酔いだったという……。そのためメッセージはこうだった、ああだったと次々と意見を訂正することから、推理は二転三転する。ある意味、ミステリとしては限りなく卑怯な気が……。ただし意外に真面目に伏線を張っていたりもするので、油断は出来ない。
カバラ、クトゥルー、エド・ディー……etcと、限りなく胡散臭い推理の展開はニヤニヤしながら楽しめるものの、終着点はボルヘスファンならすぐわかってしまうのが残念。
しかし、それよりも小説としては弱すぎるのが難。ボルヘスへの手紙+ディスカッションメインという構成から物語に動きが生まれないこともあり、物語全体が謎に対する解釈の筋書き以上のものとなっていない。そのため、これは一種の夢物語なのかと思わせるような不思議な酩酊感があるのも事実なのだが……。
で、なんなのよ? というのが正直な感想。いや、楽しかったんですけどね。
わたしはあなたの目になろうと思います、ホルへ。