宇宙のランデヴー

宇宙のランデヴー (ハヤカワ文庫 SF (629))

宇宙のランデヴー (ハヤカワ文庫 SF (629))

クラークのファースト・コンタクトSFというから、もっとドラマチックな物語を想像してしまった。実際読んでみたら、物語性も奇想性も神秘性も弱めで拍子抜けで、始めは退屈しながら読み進めていた。が、気がついたらちょっと夢中になってしまった。これが「センス・オブ・ワンダー」?
2130年、突如太陽系に現れた直径20キロの巨大な金属製円筒物〈ラーマ〉、この調査のために人類はエンデヴァー号はその内部の調査を試みる。

本作はその調査の記録である。その調査の最中に隊員の生死が危うくなったり、地球上ではその記録を議論していたり……とあるが、物語性は弱い。淡々とその目に映るものを綴るだけ、なのである。その巨大さに圧倒されたり、途中で奇妙な生物(のようなもの)が現われはするが、それが特別ヘンなものという印象もない。ラーマも人間に強い興味を示さない(というか、無関心?)なので、物語の展開に大きな変化はない。謎に満ちたラーマにしても、種を明かしてしまえば「スペース・コロニー」なので、今では少々古びている感は否めない。

が、そのコンタクトが物語のなかで侵略、調査、探検、畏怖……と様々なかたちを見せるのはユニークだ。ラーマが人類に興味を覚えないことも含めて、ここに異星人たちとの距離感の隔たりが見出せる。クラークは科学の発展に対して楽天的な作家という印象があったが、それだけではないちょっとしたアイロニカルな面も見えるようで、なかなか興味深く読んだ。

なんとしてでも、ラーマに圧倒されてはならないのだ。その先には、失敗が待っている――たぶん、狂気さえも。